スペシャルインタビュー OrangeLife VOL.3

h1三上
DF金守智哉が2年間務めたキャプテンの重責を今季、担うのは左サイドのスペシャリスト、DF三上卓哉。「自分よりもチーム」とことある毎に語る話の節々には既にチームリーダーとしての高い自意識が芽生えていた。

自分自身のチャレンジを含めてキャプテンを受けました
――もうキャプテンの肩書きは慣れましたか?
「いや、まだキャプテンとしては何もしていませんから(笑)。今は体作りの段階だし個人個人の部分なので。これからチーム作りのところでは、いいときも悪いときもあるとは思いますが、いいときは自然に、悪いときはうまくチームをいい方向に導けるような仕事をしていきたいですね」
――望月監督からは昨年末にキャプテン就任の打診があったそうですが、そのときの正直な心境は?
「自分は今までの人生の中でキャプテンをしたことがなかったですし、自分自身もそういう立場とは程遠いものだとは思っていたので、驚きが大きかったですね」
――となると、かなり自分の中でも悩まれたのですか?
「そうですね。キャプテンとしてどうしていいかもわからないので不安もありましたが、愛媛FCの中でも年齢も上の方ということで、チームを引っ張っていく立場にあることもわかっていましたし、自分自身へのチャレンジを含めて受けることにしました」
――その決断には昨シーズン1年を愛媛FCで過ごしたことも影響したと思います。では、昨シーズンを改めて振り返って頂くと?
「最初は京都から移籍してきたばかりということと、シーズンがけが(注:京都時代におった右足すね疲労骨折の治療により、4月から試合復帰)から始まったので、自分を中心に考えていたのですが、試合に出て経験する中でこのチームに足りないところが見えてきました。そこを変えたい気持ちはもっていたのですが、その時点では自分にはそんな力はないので個人的に気付いたところはできるだけ話すようにはしていました」
――「足りない部分」とは具体的に言うと?
「例えば練習中について言えば、『言われて動く』のではなく、自分から率先して動くこと。自分としては『切り替えを早く』とか『もっと厳しくいけ』と監督やコーチに一度言われた後は自分が最初にそのような行動が取れるようには意識していましたが、練習はアピールの場でもありますし、そこでの厳しさが足りないとは感じていました」
――では、キャプテンを受けたということはそのような厳しさも伝えていきたい?
「そうですね。キャプテン以前に一選手として伝えられたらどんどん伝えて。チームがおとなしいというイメージではなく、選手間で言い合えるような雰囲気になれば愛媛FCも成長できると思いますし、そういった厳しさは大事だと思います」

三上選手1秋田さんと森岡さんから学んだ「気持ち」
――さて、三上選手は三菱養和SCジュニアユース、武南高校、駒澤大学、浦和、京都、そして愛媛FCと進んで様々なキャプテンに接してきたと思いますが、三上選手から見た「理想のキャプテン像」とは?
「そんなことを考えてキャプテンを見ていなかったですからね・・・。僕はキャプテンに付いていく立場でしたから。でも、京都にいたときに秋田豊さんや森岡隆三さんと一緒にプレーしたり話をする中で、お二人は選手としての立場だけでなく、もう1つ上の立場から物を見ていることを感じましたね。秋田さんや森岡さんは当時から『監督目線だったら』とか『コーチ目線だったら』という角度からもサッカーを見ていたことで、僕も視野が広がればいろいろな発見ができ、問題点が見つかることがわかりました。その意味ではそのような方々と関わりあえたことは勉強になりましたね」
――実際に秋田選手や森岡選手のアドバイスで視野が広がったこともあったのですか?「具体的に言うと難しいですが、プレー以前の気持ちのあり方については参考になりました。自分が試合に出られなくなったときに『気持ちが動かなくなったときに体も動かなくなるので、気持ちをしっかりもって』と声を掛けてもらったことは印象に残っています。自然と体が動くときはいいのですが、そこで『体が動かなくなったときこそ気持ちが大事である』ことを改めて気付かされました」
――そうですよね。技術などはもちろん大事ですが、最後に大事になのは気持ちですよね。
「当たり前のことだし、みんながわかっていることなんですけど。でも実際、自分も試合に出られなくなって落ち込んだり、疲労で体が動かなくなった経験を経て改めてわかった部分もあるので、そのような感覚を愛媛FCで若い選手に伝えられたら個人も成長できると思いますし、チームのレベルアップにもつながると思います。その感覚を伝えることはとても難しいことなんですが、伝えられたら嬉しいですね」

自分よりもチームで戦うところを見せたい
――さて今シーズン、三上選手はチームをどうやって押し上げていきたいと思いますか?
「みんなが同じ意識を持って戦えるチームがいいですね。チームとして調子がよくなくても戻る場所、見つめなおす場所があればもう一度立ち直れると思いますし、それで立ち直れば成長できると思います。みんなが同じ意識を持って、同じ想いで戦う。気持ちもそうだし、戦術もそうですがその面で1つになれたらいいですね」
――その意味では今年の愛媛FCは「走る」ことを立ち返る場所にしようとしていますね?「そうですね。辛い練習をすれば自分自身につながりますし、厳しい練習をすることは大事だと思います」
――個人としてはどういったプレーを見せていきたいですか?
「個人的には『粘り強い』プレーをしたいですね。守備や攻撃でもそうですが90分戦う上での強さ。負け試合を引き分けや勝ちにできるような粘り強いプレーが1つのテーマです」
――やはり昨シーズンは粘り強さが欠けていたと感じていたのですか?
「自分もそうですし、チームとしても耐えるところで耐え切れず失点して負けることが多かったので。今年はそこで引き分けられれば勝ち点も積みあげられると思います」
――ところで、愛媛FCに来て1年が過ぎましたが、愛媛県にはもう慣れましたか?「はい。一通りのところは回りましたね。自分も嫁も休みや休みの前の日はあまり家にいたくないライフスタイルなので、選手仲間とご飯を食べに行ったり、積極的に周りの方や選手を誘ってどっかに行っています」
――特にお気に入りのスポットは?「いや、特にないです(笑)。(青野)大介とかの愛媛県を知っている人に聞いて連れてってもらう感じです」
――今まで過ごした埼玉とか京都とかとはまた違った風土だとは思いますが?「みんなが応援してくれて。とても暖かい人たちばかりですし、自分もとても応援してもらっている実感もありますし、頑張らなくてはいけないと思います」
――それでは、最後にみなさんにキャプテンとしての抱負を一言
「1試合1試合を大事に、全力を出し切れるようなサッカーをしていきたいです。全力を出せば見ている人たちにその気持ちは伝わると思いますし、まずは気持ちが伝わるサッカーをしていきたいですね」
――ちなみに「俺のここを見てくれ!」というのは?
「いや、僕は特に特長のある選手ではないので・・・。自分のことよりもチームで戦っているところを見せたいです」
――昨年9月5日、第34節湘南戦の2点目のような左足でのアシストをサポーターは期待しています。
「それができたらいいですけど、まずはチームがしっかり戦えることがベースにあればいいという感じですね。自分よりも」
――もう立派なキャプテンじゃないですか!
「いやいや、全然そんなじゃないですよ(笑)。チームの調子がよければ自分も上がれますから」

取材日 1月22日 インタビュー聞き手 寺下友徳
三上選手2

オレンジライフ設置場所はこちらから